2022年度 新人対抗ディベート結果

試合結果

2022年3月28日(月)15時15分から、毎年恒例の新人対抗ディベートが開催されました。約1ヶ月慣れない作業の連続でしんどい日々。その成果をお互いに競い合いました。


「ワタミは復活できるか」

○肯定側 チーム てんとうむし 5票
1年 中野、向原、/2年 稲本、福田

×否定側 チームオカピ 0票
1年 山村・岡田・木村/2年 國松

肯定側は、ワタミが赤字を解消できる理由を主に①競争環境に適合した戦略をとれていること、②コロナ前およびコロナ中も利益を支えるベースと鳴り続けた宅食事業が拡大すること、この2つに求めた。

競争環境としては、肯定側はコロナ終息後、リベンジ需要によって、外食・居酒屋需要が戻ってくるととらえている。そこに対しワタミは、駅近でサラリーマンなどのニーズに応えた、リーズナブルで利便性の高い焼き肉を展開するなどベストな業態転換を進めるなど環境に適した戦略をとることができている。

一方、コロナ前およびコロナで赤字になった状況でも業績を支えてくれた宅食については、主たるターゲットである高齢者へのヒアリング結果をベースに需要は堅調に推移すること。また高齢者に加え共働き世帯に向けたミールキットPAKUMOGUが、共働き世帯のニーズにフィット、またフリーマガジンやポスティング、宅食の既存顧客である高齢者からのクチコミといった適切なPR戦略をとれていることから、赤字回復の原動力となると主張した。

これに対し、否定側はワタミが落ち込んだ理由を、居酒屋・外食事業と宅食事業それぞれに切り分け説明した。

まず居酒屋・外食事業については、コロナという競争環境の悪化のみならず、過去数年間でとってきたフォロワー化戦略が、ニッチャーとして保ってきたワタミの強みを奪ってしまったこと、そして赤字を回復させるために力を入れているFC事業にワタミの強さが活かされず共倒れになるという主張を展開。

一方で宅食については、コロナが主に利益を支えていた理由であり、味やサービスに対してメイン顧客である高齢者の評判がよくない、また潜在的なニーズも弱いことをヒアリングによって立証した。

その後の討論について整理すると・・
ワタミが赤字を解消する上で不可欠とされるFC事業の成功可能性について、否定側がワタミのFCは初期投資が高く、利益回収見込みが低いばくちであると主張したのに対し、肯定側は、そのFCのデメリットを示すための比較対象としてゴーストレストランを選択したことは妥当ではないのではないかと主張した。

ワタミの業態転換が本当に環境変化にあった最適な策であるのか、肯定側が例としてあげた焼き肉事業の例としての妥当性について議論となった。ただ相手の主張を反証するには、業態転換が必ずしもうまくいっていないことを示す対抗論証が必要で、恣意的に焼き肉だけを選んだのではないか、ということを強く主張するにも、うまくいっていない業態転換の例があることを提示しないといけないので攻め方として難しかったかもしれない。

宅食の将来性については、肯定側も否定側も自分の主張にとって有利なヒアリング証拠をあげ、証拠の妥当性を争う戦いとなった。

自分たちの証拠のほうが質が高い、というところをもっと早い段階でアピールしたら良かったのではないだろうか(特に肯定側)。肯定側は最終反駁ではじめてその点について指摘できたが、さらっと流したかんじで話していたので、インパクトも弱く、ポイントを稼ぐまでには至らなかった感がいなめない。

双方ともに、大きな論理構造に違和感はないものの、その論理構造の中でとりあげられる具体例の選択に強引さが見られ(肯定側が業態転換の成功例として焼き肉をあげたこと、否定側がワタミのFCが選ばれない証拠としてゴーストレストランをあげたこと)、その強引さ、恣意性を薄める操作をディベートの試合中にどこまでできたかが勝負の分かれ目となった。

尋問の活発さでも差が見られた。肯定側は、否定側が主張のメイン部分を焼肉事業においてきたこと、その変化球への対応にかなり手間取っており、相手の話の全体的な論理構造を見て、批判する余裕がそれによって失われてしまったことが残念である。

否定側は、尋問などで、新しくかつ適切な証拠をきちんと出すことができており、実装の高さをうかがわせた。立論も気持ちがこもっており、全体として良いパフォーマンスであったと思う。ただし、主張それ自体は事例の選択などで強引さも見られ、最終反駁においては「視野が狭い」と批判されるきっかけも作ってしまっているので、恣意性や強引さを薄める主張の丁寧な組立て、については課題が残ったといえるだろう。


「ワークマンは今後3年間営業利益増加を継続できるか」


○肯定側 チームにわとり 3票
1年 福井・工藤/2年 今井

×否定側 チーム坂大(ばんだい) 2票

1年 坂・福井/2年 日置・葛谷

肯定側は、ワークマンがこれまで展開してきた事業(作業服・作業用品およびアウトドア・カジュアル系)が今後もニーズを獲得できる、という主張、ならびに今後の出店戦略が順調であることをFC事業の魅力という点で立証を目指す主張を展開した。いわば、「現在」がワークマンの背中を押してくれているので、「未来」が「現在」と差がない、時間の流れを止める戦略をとったのである。


しかし、作業服・作業用品のほうは、市場の伸びが今後も見込めるということ、その中でブランド価値も維持されることである程度論拠づけがなされているが、具体的な証拠の紐付けが薄い。さらに、アウトドア・カジュアル系については、生産システムの説明が雑であることから、高機能でコスパのいいものが、なぜ全く違うカテゴリでもつくれるのか、という点について論証が弱い。この2点が、その後取り回しにおいて、致命的になってくるのでは、と感じさせるできであった.

否定側は、作業服・作業用品の競争環境が悪化、作業着を必要とする顧客層の減少による市場の縮小、そして新規参入の激化によってレッドオーシャン化すること、そしてアウトドア・カジュアルへの事業拡張に無理がある(商品特性などが違いすぎて、既存ビジネスモデルとの矛盾が生じる)という主張を展開した。

第1試合と異なり、第2試合は真っ向勝負となったため、論点は非常に明確なものとなり、尋問も活発、比較的かみ合った議論となったと思われる。

主要な論点は以下の2点である。
①ワークマンがアウトドアやカジュアルに拡張していくことの妥当性。FC事業など内部オペレーション、ビジネスモデルが本当にこれらの商品にも適合するのか否か、ここについては論理的に否定側優位であったが、否定側も、第1反駁でFCオーナーへのヒアリング結果など証拠を出しながら、少しイーブンに戻す操作で対抗。
②作業服の競争環境が今後悪化するのか、良化するのか。否定側が市場が縮小するとした予測の根拠がやや薄いこと、レッドオーシャンを証明するために、ライバルを不自然に多く見せていることを肯定側が第1反駁で強烈に示したことで、この点については第1反駁終了時点で肯定側が不利に流れた。

立論をぱっと見て比較したときには、肯定側のほうが実装が足りてないのではないかと見える内容であったが、取り回しの中で適切に証拠を追加し、終わってみれば実装では見劣りしない状況まで持ち直した。

評価がどちらに流れるかは、第2反駁次第・・というかんじであったが
論点1では、否定側が自らの論理的な優位をさらに強める主張を展開、
アウトドア・カジュアルの特殊性とそれをいままでのやり方ではまわせないことを印象づける弁論を展開。
論点2の作業服・作業用品の市場縮小の証拠の妥当性、否定側も証拠の妥当性に関する議論の劣勢を回復する証拠を追加して対抗。

肯定側の最終弁論は論理構造は整理されているものの、1つ1つの枝の論証がやや弱い。たとえば根拠がない、という表現をしたときに、どこがどのように根拠がないのかをより具体的に示す必要があるが、そこが足りてない箇所が散見された。論点2の作業服・作業用品の市場がどうなるのか、に関する論証では否定側の主張のほうが、より論理的で説得力があったように思われる。

全体として論理・証拠の両面でイーブン。ジャッジの票も3対2と僅差で肯定側であった。否定側は、肯定側が第1反駁でより鮮明に打ち出した「未来は現在と大きく変わらない」という時を止める操作を最後まで無効化できなかったことが結果に響いたのだろう。


長かったけど短かった。しんどかったけど、終わってみたら少しだけ晴れ間がのぞいてた。

そんな気持ちです。まだまだ先は長いし、いろんなことがあると思うけど、一緒に乗り切れたらいいなって心から思います。今日は新4年生と1名の卒業生が遊びにきてくれました。ジャッジやコメントも引き受けてくれました。感謝しかありません。ありがとうございます。

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